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肝胆膵の外科について -外科より-

当科では肝臓、胆道(胆管、胆嚢、十二指腸乳頭部)、膵臓の悪性・良性疾患に対して広く対応をしています(模式図①)。
模式図①

肝臓疾患

肝臓の悪性疾患(主にがん)は肝臓由来の原発性肝がんと大腸がんや胃がんなどからの転移による転移性肝がんに大別されます。

 

原発性肝がんのうち肝細胞から発生した肝細胞がんが約95%、胆管由来の肝内胆管がんが約4%、その他が1%未満とされています。

肝細胞がんの原因として慢性肝障害(慢性肝炎や肝硬変)があり、C型肝炎ウィルスによるものが最も多く約65%、B型肝炎ウィルスによるものが約15%、と報告されています。さらに最近は生活習慣病や肥満による非アルコール性脂肪性肝疾患などがあります。

 

肝がんは自覚症状が乏しく、上記の慢性肝障害の経過観察、人間ドックや検診で施行された血液検査や腹部超音波検査で異常を指摘されることがあります。

 

診断は血液検査(腫瘍マーカー)、超音波検査、造影CT、造影MRI、血管造影、FDG-PET検査、肝生検(病理検査)、等を組み合わせて行うのが一般的です。

 

治療には病変の広がりだけでなく、肝臓の障害程度を勘案し、手術(肝切除)、ラジオ波焼却術、肝動脈化学塞栓術、全身化学療法、放射線治療、等を選択します。

転移性肝がんの治療は病変の広がりと原発となるがんにより治療方針が異なります。手術となる症例は大腸がん(結腸がん、直腸がん)が主です。

胆道疾患

胆道がんの日本での死亡数は、全がんのうち第6位と報告されています。 胆道がんはその占拠部位に応じて肝門部領域胆管がん、胆嚢がん、遠位側胆管がん、十二指腸乳頭部がんに分類されます。

初発症状のうち主なものは黄疸(眼球や皮膚の黄染)ですが、症状出現時は既に進行がんであることが多く、後述の膵がん同様に手術が困難なことがあり予後不良(経過不良)ながんの一つです。

 

手術治療として多いのは肝門部領域胆管がんでは広範囲肝切除を伴う胆管切除術ですが、広範囲肝切除に伴う術後肝不全のリスクや、肝臓に流入出する肝動脈、門脈、胆管の切離や温存が困難なこともあり高難度手術の一つです。

また、胆嚢がんでは病期(Stage)により胆嚢摘出から肝切除を伴う胆管切除まで種々の手術法が選択されます。一方、遠位側胆管がん、十二指腸乳頭部がんでは主に膵頭十二指腸切除術(後述)が施行されます。

 

良性疾患で頻度の高いのは胆嚢結石症です。

これは胆嚢内に結石(胆石)ができたものです。無症状で、検診や人間ドックで偶然に発見されたような場合は経過観察となることもあります。

一方、胆石が原因で胆嚢炎を発症すると、右季肋下(右の肋骨の下あたりです)や心窩部痛(鳩尾)の痛み、背部痛があり、発熱や吐気・嘔吐を呈することがあり、治療が必要になります。

軽症なら在宅で抗生剤内服、中等症なら入院で抗生剤点滴、重症では経皮経肝胆嚢ドレナージ(局所麻酔で皮膚・肝臓を貫いてチューブを挿入あるいは留置し胆汁を排液します)や緊急手術(腹腔鏡か開腹かは検討します)になります。軽症、中等症でも後日の手術をお勧めします。薬剤による胆石溶解療法もありますが効果は限定的のようです。

 

手術では胆石だけを摘出するのではなく胆嚢全体を摘出(胆嚢摘出術)するのが一般的です。現在は腹腔鏡を用いた腹腔鏡下胆嚢摘出術が一般的ですが、胆嚢炎の所見が顕著な場合は開腹胆嚢摘出術を行います。

膵臓疾患

膵がんのわが国の死亡数は全がんのうち男女とも第4位と報告されています。 膵がんは症状出現時に既に進行がんであることが多く、肝臓や肺などへの転移、あるいは周囲に広範な浸潤をしており手術治療が不能なことが多いのが一因と思われます。膵周囲には上腸間膜静脈・門脈、総肝動脈・固有肝動脈、腹腔動脈、上腸間膜動脈、などの主要血管があり、これらに病変がおよんでいると手術は困難であり難治性がんの一つである理由と思われます。

 

膵がんは膵頭部がんと膵体尾部がんに分類されます。
膵頭部がんに対しては膵頭十二指腸切除術、膵体尾部がんに対しては膵体尾脾切除が行われるのが一般的です。
膵頭十二指腸切除術では膵頭部に加え、肝外胆管(胆嚢を含む)、胃の一部、十二指腸、空腸の一部を切除し(模式図②、赤矢印が切離線です)、食事および消化液の通路を再建します(模式図③、黒太線が吻合部)。長時間におよぶ侵襲度の大きい手術です。

模式図② 模式図③

最後に

肝胆膵領域の病変は診断に苦慮することがあり、また、種々の治療法があります。個々の患者さんにおいて適正な治療方針を立て、それを実践することが肝要です。当院では外科だけでなく他科の医師とも連携して治療に当たっております。